【世界陸上】日本と中国で結果に大きな差がついた理由を考えてみる

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昨日は、世界陸上の目玉競技の1つでもある「4×400mリレー」が男女ともに行われました。そして、ジャマイカがアベック優勝を飾りました。

 

どちらも盤石の勝利だったと思います。やはり世界の短距離界を牽引するのは、まだ当分はジャマイカのようですね。

 

逆にアメリカは、男子も女子も2位に入りましたが、男子は失格ということになってしまいました。アンカーへのバトンパスの時に、パスエリアを超えてしまったようです。残念です。

 

アメリカのリレーチームは昔から、特に男子がバトンミスをやらかすことが多いですね。一人一人のポテンシャルに頼り過ぎなのか、それともバトンパスを軽視してるのか。

 

なんにせよそこはきちんと修正して強化していかないと、最強ジャマイカの牙城を崩すのは、たとえボルトがいなかったとしても厳しいかもしれません。来年のリオ五輪では二の舞にならないようにしてほしいですね。

 

 

中国がまさかの3位

 

で、男子では中国が3位に入る(アメリカが失格なので結果的に繰り上げで2位)というサプライズがありました。日本が3位に入ったときのように、強豪国のいくつかが準決勝までに失格でいない、という状況ではない中での銅メダル。正直、驚きでしたね。

 

でも、中国が陸上界でかなり力を付けているのは確かです。今は消えてしまいましたが、一時は110mHで世界新を出した劉翔や、今回もちょくちょく上位に入ってくる選手が出てきています。

 

やはり中国は国家レベルで常にアスリートの育成・強化に取り組んでいるので、その成果が出ているということでしょう。逆に日本は、その辺はまだまだ未熟ですね。

 

たとえば「オリンピック強化費」1つ見ても、中国は年間120億円に対し、日本はわずか「27億円」です。韓国ですら106億円使っているのに。(1位はドイツの274億円)

 

 

中国が国をあげて取り組むアスリート育成

 

他にも中国には、国家プロジェクトとしてアスリートを育成する様々な仕組みがあります。それについて詳しく書かれたとあるブログから引用します。

 

中国におけるスポーツ選手は国家が育て、国家のために競技を戦い、その成果は国家に帰することが原則となる。そのために、国家は彼らに基本的な衣食住と豊かな練習環境、指導者を提供する。最終目標はオリンピックであり、そこで金メダルを取って、中国の威光を世界に示すことである。その点については一切異論はない。選手たちがしばしば口にする「祖国争光」という言葉がそれである。

彼らいわゆるスポーツエリートは幼いころに選抜される。ある指導者に聞くと、彼は休日などに公園などを訪れ、遊んでいる子供たちを観察するそうだ。子供たちが跳んだり、走ったりする様子を見れば、その筋肉の使い方で、才能の有無はすぐに分かる。これだという子供を見つければ、保護者とコンタクトをとるのである。

この指導者は一般に地方の「業余体育学校」といわれるスポーツ専門学校のコーチである。「業余」とは「アマチュア」くらいの意味だ。この体育学校、そして体育技術学校と呼ばれる専門学校に入学すれば、彼らはスポーツエリートへの第一歩を踏み出したことになる。以前は、この体育学校は毎日休みなく、運動教育のみが行われていたようだが、現在は、午前中、教科教育を行い、午後から体育(すなわち彼らの専門)の授業というパターンが多い。

そこで優秀な選手は、今度は体育学校を抜け出て、地域ごとに集められ、地域代表選手として指導を受ける。いわゆる省・市代表チームである。そしてさらに優秀な選手が今度は北京に召集され、栄えある「国家チーム」の一員として、超一流のスポーツ英才教育を受ける。オリンピック、世界選手権などに出場できるのは、基本的にはこの国家チームの選手であり、アスリートを志す若者は、一握りのこのグループを目指して、日夜努力するというわけである。

この「体育学校」→「省・市代表」→「国家代表」というピラミッド型の選手育成システムを「三級制度」と呼んでおり、中国のアスリート養成の基本となっている。この三級制度は、何をおいてもオリンピックで金メダルを取るためのものであり、そのための「挙国体制」といえる。そして、このピラミッドに入れない者は、基本的にはアスリートの道から遮断され、スポーツとはほとんど縁のない生活を送ることになる。

 

出典:知られざる中国スポーツ(1)

 

これを見ても分かるように、中国のアスリートは皆、基本的に「選ばれしエリート」です。逆に言えば、国に選ばれなければ、トップアスリートになるのは難しい(不可能ではないでしょうが)という厳しい現実の裏返しでもあります。

 

これだけ国家レベルで育成の仕組みを作っている中国と、プロスポーツでもない限り、基本的に個々の裁量にゆだねられている日本とでは、結果に差が出て当然ですよね。今回の世界陸上を見る限り、来年のリオ五輪ではさらにその差が如実に出る気がします。

 

 

アスリートを目指す子は中国で生まれるのが幸せか。日本で生まれるのが幸せか。

 

もちろん、どちらにも良し悪しはあります。国から選ばれたエリートになるということは、必然的に結果を求められますので、もしも結果が出せなければ、その後は非常に厳しい現実が待っています。

 

なので、アスリートにとって、もっと言えば一人の人間にとって「どちらが幸せか」というと、それはなんとも言えないところです。

 

ただよく言われることですが、日本のスポーツ界は「金は出さない。でも口は出す。」という面が大いにあるので、選手としてはやりにくいでしょうね。特に五輪スポーツの大半はプロがないので、そうだと思います。

 

 

ようやく重い腰を上げ始めた日本

 

まぁ日本政府もようやくその辺りの重い腰を上げる気になったのか、2020年の東京五輪に向けて、オリンピック育成費を100億円に引き上げようという動きもあるようですが…まだどうなるかはわかりません。

 

ただなんにせよ、日本も「口は出す。でも金もちゃんと出す。」という風にしていかないと、世界の舞台で上位に入るのは難しくなっていくでしょうね。結局今回の世界陸上でも、日本は銅メダル1個でしたし。

 

柔道のようなお家芸ですら、かなり諸外国にお株を奪われることも増えてますしね。

 

しょーもないことに貴重な血税をドバドバ注ぎ込むくらいなら、スポーツの発展にどんどん注ぎ込んでもらいたいと思います。たとえば年度末の無駄すぎる公共工事なんてその典型ですね。

 

スポーツの発展は、平和的に国を繁栄させていく大きな一助になると僕は思っているので、JOCを始め、国のアスリート育成に関わる機関には、根本的に仕組みを考えて欲しいなぁと思います。